ベネズエラのマドゥロが中央銀行の金 /Goldを売却出来たワケ、と 教訓

要約とまとめ

ベネズエラのマドゥロ大統領が中央銀行の金/Gold を売却出来た理由は、金/Gold は、1.金融システムの外にあること、2.本源的価値を持っていること、3.需要が旺盛であること。私達一般市民は、万が一の経済危機に備えて、ある程度の現金と金/Gold を準備しておくのが得策です。

目次

・ベネズエラの金/Gold についての最近の報道
・マドゥロ大統領が金/Gold を売却出来るワケ
・ベネズエラの市民生活
・日本の一般市民である私の準備
・私がもし大富豪だったら

ベネズエラの金/Gold についての最近の報道

ベネズエラは米国の金融制裁を受け、国際金融システム=米国金融システムにアクセスできなくなっています。国家運営におけるマドゥロ大統領の舵取りの失敗や、ベネズエラの主力輸出品、原油の価格の低迷などにより、既にベネズエラ経済は瀕死の状態になっていますが、原油輸出不能や国家資産凍結につながった今回の金融制裁は、マドゥロ政権に対する止めの一撃となりえます。

経済が瀕死の状態にある最中、次第に金融制裁が強まっているにも拘らず、ベネズエラが4億ドル相当の金/Gold を売却したとブルーンバーグが2019年4月16日に報道しました。9トンにも及ぶ金/Gold です。金/Gold 売却観測は2019年になってから3回目となります。べネズエラ中央銀行が出したデータによると、外貨準備が4月12日時点で86億ドルに減っていて、4億ドル相当の売却分が既に反映されているということです。

この報道によると、金/Gold は、UAEの法人とトルコの法人が購入しました。米当局がベネズエラのマドゥロ大統領とは取引しないようにと呼び掛けているにも拘らずです。

マドゥロ大統領が金/Gold を売却出来るワケ

強まる金融制裁の中、マドゥロが金/Gold を売却出来るワケとは。

理由は3つ。

1.金/Gold は金融システムな外にあること
2.人々が金/Gold に本源的価値を認めていること
3.金/Gold の需給が逼迫していること

1.金は金融システムで管理されていないということ

米国がベネズエラを金融システムから遮断したことで、ベネズエラは原油の輸出代金(米ドル)を受け取れなくなり、同時に、輸入側の国々はベネズエラから原油を輸入できなくなりました。なのにマドゥロは金/Gold を外国に売却出来ました。原油も金/Gold もモノという意味では同じです。違いは何でしょうか。

違いの1つは、金融システム内で管理されているか否か、です。

原油取引は主に米ドルで決済します。これは1970年代に米国が主導して、サウジアラビアと共に築き上げた原油取引のルールです。

1960年代には米ドルに対する信認がかなり剥げ落ちていたのですが、1970年代にこのルールが出来たことで、米ドルは事実上の基軸通貨の地位を維持し、今に至っています。

米国と上手く付き合っていきたい国は、原油取引を米ドルで決済しなければなりません。米ドルの決済は金融システムで行われます。したがって、原油取引は金融システム内で管理されていることになります。また、原油は他の国から容易に輸入できます。なので、米国と上手く付き合っていきたい国はベネズエラから原油を輸入するのを止めてしまい、結果、ベネズエラの原油は動かなくなりました。

一方、金/Gold は、原油取引のような米国主導の歴史的な取引慣行はありません。つまり、金/Gold はもともと金融システム内で管理されてはいません。米国の金融制裁では、金/Gold を動かすことに何ら支障は来たしません。航空機を使って運び、現金で決済出来ます。これを阻止するとしたら、ベネズエラ周辺の空域や海域を封鎖しなければなりません。そこまですれば阻止出来るかもしれませんが、戦争になってしまうかも知れません。

2.人々が金/Gold の本源的価値を認めていること

人類は、3000年ほど前から金/Gold を価値ある物として扱ってきました。古代エジプトは、近くにヌビアという大規模な金/Gold の産地を抱えていたからこそ豊かに栄えました。金/Gold を使って他の地域の人々から様々な有用な物資を集めて栄えていきました。

近代においては、金/Gold を価値の基準と定めた金本位制が採用されました。

ただ今現在では、金本位制は廃止されましたが、廃止してもなお各国の中央銀行は膨大な量の金/Gold を保持しています。2018年、中央銀行は金/Gold 最大の買い手で、651.5トン買い増ししました。

理屈では、金/Gold は貨幣の必要条件を満たしている、ということもあります。が、しかし、金/Gold は不思議と人類を惹きつけてきましたし、今も変わらず惹きつけています。

今回、ベネズエラの相手となって金/Gold を買った法人については明らかになっていませんが、この購入者は札束を手放し金/Gold を入手しました。

3.金/Gold を一時に大量に買うチャンスは滅多に無いということ

金/Gold に詳しい方が次のように言っています。

金/Gold に対する需要は非常に旺盛で、スイスにある精錬所では生産が注文に追いつかず、納品待ちの長いリストが伸び続けています。精錬所の悩みは、原料を如何に調達するかということです。また、金鉱山では生産した金/Gold が売れ残る気配は全くありません。

今年に入って、ベネズエラが金/Gold を大量に放出していますが、これは金/Gold の買い手にとっては滅多に無いまとめ買いのチャンスです。今回ベネズエラの金/Gold を買った法人は、米国から睨まれるリスクを負ってでも、まとまった量の金/Gold を手に入れるべく行動に出たのでしょう。

ベネズエラの市民生活

ベネズエラの経済危機で、市民生活は困窮しています。食糧不足、大規模停電、断水、医療施設の機能不全、ハイパーインフレなどが起きています。市民の中には、食糧や日用品を入手するために砂金を取っている方々もいます。また、大勢の市民が歩いてブラジル、コロンビアに脱出してします。国境の町は混乱し、暴動も起きています。

日本の一般市民である私の準備

日本がベネズエラのように経済危機に陥ったり、米国から金融危機を受けたりする可能性はほぼ無いと思っています。日本経済はベネズエラよりずっと懐が深いですし、日本は米国と上手く付き合っているからです。

でも、グローバル金融システム自体が機能不全を起こし、金融危機から経済危機に至る可能性はゼロではない、万が一には有ると考えています。

万が一、長く金融が滞ったら、銀行の電子送金が停まったら、ATMでの現金引出が制限されたら、物流に支障が出たら、今のベネズエラのようになったら。

この万が一に備えて何をすればよいでしょうか。私が出来ることは次のように限られています。

1.ある程度の現金を準備しておく

大規模な停電が起きたらSuicaなど電子マネーは使えないですし、ATMも停まり現金を引き出すことも出来ません。金融危機ではありませんが、2017年8月、米国テキサス州をハリケーン・ハービーが襲った後、停電が長く続きました。その際、物を言ったのは現金でした。

2.ある程度の金/Gold を準備しておく

万が一経済危機に陥ってしまったら、物価は上がります。もしハイパーインフレになれば、現金の購買力は劇的に落ちます。十分な食糧を買えないかも知れません。現金では食糧を得られないかも知れません。その時には、金/Gold が物を言います。紙幣よりも金貨の方が取引に応じてもらい易いです。

私がもし仮に大富豪だったら

私がもし大富豪だったら、別の準備をします。

田舎の農村で農地や牧場を家畜を入手し、そこでの作業に慣れている方々を雇い、経済危機が去るのを待ちます。

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